【免許返納と比較】本当に返納すべきか？迷っている方へ

高齢者による事故や認知機能の低下が社会的に注目されるなか、「このまま運転を続けてよいのか？」「免許を返納すべきか？ それとも維持するべきか？」と、判断に迷う方が増えています。

しかし、免許返納は単なる“終了”ではなく、生活や行動範囲を大きく変える決断です。

特に地方やクルマ依存度の高い地域に住む方にとっては、返納が新たなストレスを生むことも。

そこで注目されているのが、「免許を返納する前に、再取得・再確認という選択肢もある」という視点です。

■ 「返納か再取得か」迷うときの3つの考え方

【1】運転の必要性が日常にどの程度あるか？

• 公共交通が不便な地域で生活している
• 病院や買い物への移動に車が不可欠
• 家族の送迎や農業・仕事で車を使う

【2】体調・判断力・反応速度に自信があるか？

• 健康診断・認知機能検査で問題なし
• 運転中のミスやヒヤリ体験がない
• 周囲からの指摘も特にない

【3】家族や周囲の支援体制があるか？

• 必要時に送迎してくれる家族がいるか
• 移動手段（バス・タクシー・福祉輸送など）を確保できているか

■ 免許返納の主なメリットとデメリット

■ 再取得（再チャレンジ）という選択肢も

合宿免許では、「過去に免許を持っていた方」「高齢で一度返納を考えた方」向けに、
以下のようなプランや配慮が増えています。

■ 再取得と返納、どちらが自分に合う？比較表

比較項目	再取得（合宿）	返納
目的	安全確認・運転維持	運転の終了
費用	15〜30万円前後（プランによる）	原則無料
所要期間	2〜3週間（短期集中）	即日または数日
精神面	「まだ運転できる」という自信につながる	「卒業」という達成感にもなるが、喪失感も
向いている人	運転が必要・自信はある・確認したい	不安が強い・家族が代替手段を提供できる

家族と話し合う（移動手段や今後の生活）

免許返納は、単なる“カードの返却”ではなく、生活の自由度に関わる大きな選択です。

特に地方や郊外にお住まいの方にとっては、運転をやめることが買い物・通院・外出そのものの難しさにつながりかねません。そこでまず重要になるのが、家族との話し合いです。

「どうやって移動するか」「代替手段はあるか」「どんな不安があるか」を共有することで、返納すべきかどうかの判断がより現実的になります。

■ なぜ家族との相談が必要か？

理由	内容
運転が生活の“足”になっている	日常的な買い物・通院・趣味・孫の送迎などに車が必要なケースが多い
一人では判断が難しい	「まだ大丈夫」と思っても、家族はヒヤリとした場面を見ているかもしれない
返納後のサポート体制を確認できる	移動手段の代替（送迎・公共交通の利用など）を家族と共有できる
孤立やストレスを防げる	精神的な支えとして、返納後の生活に不安が生じないよう支援できる体制を整える

■ 話し合いで確認すべき主なポイント

① 現在の運転の必要性を整理する

• 通院や買い物の頻度と距離
• 家族への送迎（配偶者・孫など）
• 趣味や友人との交流などの外出回数

② 代替手段をどう確保できるか

• 家族による送迎の協力は可能か
• 電動自転車やシニア向けバスの活用は可能か
• 福祉タクシーや市町村の移動支援制度の利用可否

③ 不安や気持ちを率直に伝える

• 「まだ自信はあるけど判断がつかない」
• 「事故のリスクは心配だが、家でじっとしていたくはない」
• 「判断を急がず、少し試してみたい」など

④ 再取得・再確認も視野に入れるかどうか

• 「合宿免許で再度教習を受けてみたい」
• 「安全確認として一度プロの指導を受けたい」などの希望がある場合は共有しておく

■ 話し合いを円滑に進めるコツ

コツ	内容
一方的に責めない	「もう危ないからやめて」と言われると反発が出やすい。あくまで心配・相談の姿勢が大切。
過去の運転記録を振り返る	最近の運転でのミス・ヒヤリ体験を共有すると冷静に話しやすくなる
一緒に移動手段を調べる	バス路線・タクシー補助・送迎サービスなどを一緒に調べる姿勢が安心感につながる
教習所の再確認コースも提案	「安全確認としてプロに見てもらうのもありだね」と中間的な選択肢を示すのも効果的

医師やかかりつけ病院で運転に関する意見を聞く

運転を続けるか、それとも返納するか。この判断は、自分自身の感覚だけでなく、客観的な体の状態・認知機能をもとにすることが大切です。

特に加齢に伴う健康リスクは本人が自覚しづらい場合が多く、「まだ大丈夫」という気持ちと「万が一のリスク」はしばしばズレが生じます。

そのため、日頃から健康を把握している“かかりつけ医”や専門医に、運転に関する意見を聞くことは有効な判断材料になります。

■ なぜ医師に相談すべきなのか？

理由	内容
判断力・反応力などの低下は見た目で分からない	医学的な視点で身体機能・認知能力の変化を正確に把握できる
服薬の影響も判断可能	服薬中の薬が運転に影響を与える（眠気・注意力低下）可能性があるか確認できる
客観的な意見として家族にも伝えやすい	医師の診断があれば、返納・継続の判断に説得力が増す
万一事故を起こした際の社会的責任を防ぐ	適性がないと判断されたまま運転を続けると、事故時の責任が重くなるおそれもある

■ 医師に相談する際の具体的なポイント

項目	質問・伝える内容
自分の運転状況を伝える	「週に何回運転している」「夜道や高速道路も使っている」など現状を具体的に
不安や違和感を正直に話す	「最近判断が遅くなった気がする」「ハンドル操作に不安がある」など自覚症状があれば必ず伝える
服用中の薬について確認	「この薬を飲んだあと運転しても大丈夫ですか？」と確認する
客観的な診断が必要な場合	診断書や意見書を書いてもらえるか相談（合宿免許や更新時に必要な場合も）

■ どんな診断内容が参考になるか？

• 視力・聴力の状態：運転適性として最低限の感覚機能があるか
• 認知機能検査（記憶・判断・反応など）：判断ミスや遅れがないか
• 運動能力・可動域の確認：ブレーキ操作やハンドル回しに支障がないか
• 服薬状況：副作用により意識・注意力が低下しないか
• 脳や神経系の病歴：てんかん、脳梗塞、パーキンソン病などがあるか

■ 相談先として適している医療機関

種類	特徴
かかりつけ内科医	日頃の健康状態を把握しており、運転の影響を総合的に判断しやすい
脳神経科・認知症外来	判断力・記憶力・反応性などに特化した検査が可能
高齢者専門外来	高齢者特有の運転リスクを理解しており、適切なアドバイスが得られる
眼科・耳鼻科	視力・聴力に不安がある場合は専門検査を受けると安心

教習所で高齢者向け講習・再取得プランを相談する

「まだ運転できる気がするが、万が一が怖い」「周りから返納を勧められたが、自分では判断がつかない」

そんな迷いを抱えたとき、自分の運転能力を客観的に確認する方法のひとつが、教習所での高齢者向けプランの活用です。

現在、多くの教習所ではシニア世代のために、再確認・再練習・再取得のための講習や特別プランを用意しています。

免許を返納するかどうかを判断する前に、こうしたプログラムを活用することで、後悔のない選択ができる可能性が高まります。

■ なぜ教習所で相談するべきなのか？

理由	内容
客観的な運転技能のチェックが可能	実際の運転で、反応・判断・操作などを教官が評価してくれる
専門的なアドバイスがもらえる	「この部分が少し不安ですね」「このくらいなら再取得も十分可能です」など、プロの視点で助言が受けられる
万一に備えて再取得を視野に入れられる	一度返納した方でも「再取得プラン」で安全に運転の再スタートが可能
合宿なら短期集中で再習得も可能	教習に特化した環境で、安全確認と技術の復習が一気にできる

■ 主な相談対象となるプランの種類

プラン名	内容
高齢者向け安全運転講習	自主的に受講する実技講習。運転操作・認知判断・反応速度を実技で確認。指導員から直接フィードバックが受けられる。
ペーパードライバー講習	長年運転から離れていた方向けの復習コース。ブレーキ・坂道・駐車などを再確認。
再取得プラン（合宿型・通学型）	一度返納・失効した方が新たに免許を取得するためのプラン。高齢者対応を整えた教習所も増加中。
認知機能サポート講習	高齢者講習と合わせて、認知機能のチェックや安全運転アドバイスを受けられるものもあり。

■ 実際の相談内容の例（教習所に聞くべきこと）

• 「70代ですが、再確認のために実技講習を受けられますか？」
• 「以前に免許を返納したのですが、再取得は可能ですか？」
• 「高齢者向けの特別カリキュラムはありますか？」
• 「体力面が心配なのですが、教習スケジュールをゆっくり組んでもらえますか？」
• 「医師の診断書が必要な場合、どのような書式が必要ですか？」

■ 高齢者向けに配慮されている教習所の特徴

特徴	解説
年齢制限なし・相談可能と明記	70歳以上も対応しているか、柔軟に対応してくれるか
教習ペースの調整が可能	疲れやすい人向けに「1日1時限」などのカスタム対応あり
医師の診断書で受け入れ可能	高血圧や服薬中でも、医師の許可があればOKという教習所もある
宿泊環境や生活支援も充実	温泉付き・個室・エレベーター完備など、身体的負担を軽減する施設も選べる

市役所・警察署に返納制度の内容と特典を確認する

免許を返納するかどうかを考えるうえで、「返納後の暮らしにどのような支援があるか」を知ることは、非常に重要な判断材料になります。

現在、日本全国の自治体では、高齢ドライバーの自主的な免許返納を促進するために、公共交通の割引・商品券の配布・移動支援サービスの提供など、さまざまな優遇措置を実施しています。

しかし、これらの制度は市区町村ごとに内容が異なるため、迷っている段階でも「市役所」や「警察署（運転免許課）」で直接確認することが非常に有効です。

■ なぜ市役所・警察署に相談すべきか？

理由	内容
制度の内容は地域ごとに異なる	同じ都道府県内でも、自治体によってサポートの有無・特典が大きく異なるため、公式情報の確認が必要
最新情報が得られる	制度は年単位・予算単位で変更されるため、インターネットの情報が古い場合もある
自分の住所地で使える制度かを把握できる	「○歳以上限定」「本人の申請が必要」など、適用条件が細かく定められているため、個別確認が重要
申請手続きの方法もわかる	返納後に申請書が必要なケースも多く、事前に流れを把握しておくと安心

■ 相談先として有効な機関

機関	主な内容
市区町村の窓口（高齢福祉課・交通政策課など）	地域独自の支援制度・公共交通割引・商品券などの案内・申請窓口
警察署・運転免許センター	免許返納の手続き方法・必要書類・運転経歴証明書の発行についての説明
地域包括支援センター	高齢者の生活支援全般を扱う機関。移動手段に関する相談も可能

■ 実際に確認すべき主な項目

確認項目	内容の例
返納の条件	何歳以上対象か／本人の申請が必要か／返納と同時に申請できるか
特典内容	バス・タクシーの割引、福祉タクシー券、商品券、買い物宅配支援など
特典の申請方法	「返納証明書」または「運転経歴証明書」が必要／窓口持参・郵送・オンライン対応の可否
有効期限	特典がもらえるのは返納から◯か月以内、など期限が定められているケースもある
他の支援制度との併用	介護保険サービス・地域支援制度などと組み合わせ可能か確認

■ 実際にある特典の例（地域差あり）

自治体例	特典内容
東京都練馬区	バス・都営地下鉄のシルバーパス補助、タクシー割引券（条件あり）
千葉県佐倉市	商品券1万円分、地域バス無料利用カードの発行
岡山県岡山市	タクシー初乗り無料券10枚、買い物代行サービスの割引
新潟県上越市	福祉タクシー券交付、地域バスの利用料免除制度

■ 注意点

注意項目	内容
「運転経歴証明書」が必要な場合が多い	単なる返納では特典が受けられず、証明書の取得が条件となることが多い（要申請・発行手数料あり）
申請タイミングに制限あり	「返納から〇日以内に申請」など、締切が設定されていることがあるため事前確認が重要
家族が代理申請できないことも	一部自治体では本人確認が必要で、本人の来庁・署名が求められることがある
制度変更の可能性あり	予算や行政方針により、年度途中で内容が変更・終了となることがある